プロ棋士の対局では、ほぼ必ず記録係が棋譜の記録や時間の計測を行っています。
ただ座っていればいいだけにも見える記録係ですが、思った以上に過酷な仕事です。
今回の記事では、プロの対局に欠かせない記録係は何をやっているのか、どんな苦労があるのかをお伝えしています。
記録係はどんなことをする?
プロの対局は、必ずその記録(棋譜)を残すようにしています。
対局の記録を取るのが記録係の仕事で、主に以下のことを行っています。
- 棋譜を記録する
- 持ち時間の計測を行う
そして、記録係は主に奨励会員が務めます。
棋譜の記録は、用紙に手書きで行うのが主流でしたが、近年はタブレットで入力することも増えてきています。
対局中はいつ指すかわからないので、基本的に記録係は机から離れられません。
昼食休憩や夕食休憩を除いて気軽にトイレにも行けないので、水分はあまり取らないようにしているようです。
また正座を崩すわけにもいかないので、この点も大変です。
そのため、棋士の先生によっては、「しばらく長考するから」「お茶お願いできるかな」と声をかけることもあるようですね。
このことで、トイレに行ってもらったり、足を楽にしてもらったり、配慮をしていると考えられます。
居眠りは仕方ない
ネット中継を観ていると、たまに記録係の人が眠そうにしていたり、コックリコックリ船をこいでいるのを見かけることがありますね。
「大事な対局なんだからしっかりしろ」と思う人もいるかもしれませんが、仕方ない部分はあると思います。
長時間座りっぱなしだと疲労も溜まってきますし、指し手が進まない状況では眠くなるのも無理からぬことかなと・・・
記録係は勝手に休憩もできないですし、寝不足の時や体調の悪い時など、つらいこともあると思います。
記録係を務めた時の手当、報酬
奨励会員は修行の身なので給料が支払われることはありませんが、記録係を務める時は報酬が支払われます。
もらえる手当は、1日6千円~1万円です(by将棋の渡辺くん)。
もちろんプロの対局を間近で観戦できるのは勉強になるのですが、近年は将棋ソフトで勉強できる土壌が整っているので、同じ時間をそちらに当てた方がいいのでは?という見方もあります。
いずれにしても、記録係は負担が大きく、時間の拘束が長い割にもらえる報酬が多いわけではありません。
そのため、積極的に記録係をやりたいと思う人はほとんどいないのが実情になっています。
近年は記録係が不足している
上記のような理由と、奨励会員は学業優先であるため、近年は記録係が足りないことが問題になっています。
また、コロナ禍の影響がさらに拍車をかけ、今では女流棋士や現役の棋士が記録係を務めることも増えてきました。
そういった事情もあり、2020年に試験的に導入され始めているのが、リコーと日本将棋連盟が共同開発した『将棋AI棋譜記録システム』です。
天井のカメラで盤面を撮影、指し手の様子をAIが判断し、記録・保存するというもの。
消費時間は、対局者がスイッチを押すことで対応しています。
対局開始時に、機械音声で「対局を始めてください」と声がかかるのは、今の時代ならではという感じです。
まとめ
ということで、プロの対局には欠かせない記録係についてのまとめ記事でした。
ネット中継では、記録係は中央に座っているので、場合によっては対局中の棋士より目立ってしまうこともあったりしますね。
棋士の指し手や所作はもちろんですが、記録係の様子や苦労にも思いを馳せると、中継がさらに楽しいものになるかもしれません。
棋界にも忍び寄る人手不足解消に、AIの普及はこれからも進んでいくと思いますが、タイトル戦に関しては従来通りのやり方を守ってほしいですね。