実戦で出てくるケースはあまり多くないかもしれませんが、中合いの歩は覚えておいて損のない手筋といえます。
「もう助からない、投了だ」と思った局面が、実は助かっていたというケースがあるんですね。
今回は、中合いの歩の例を見てみたいと思います。
中合いの歩とは?
中合いの歩
香車、角、飛車の飛び道具で王手をされた時、自玉と相手駒の中間、味方の駒の利きがないところに歩を打って受けること。
通常、上記の駒で王手された時は、自玉のすぐそばに駒を打ったり、または守り駒を移動させて王手を防ぎますよね。
中合いの歩は、自玉と王手をかけてきた駒の中間にあえて歩を打ち、わざと取らせることで逃げ道を開拓する高等テクニックです。
中合いの歩の例題
第1図(△2三香まで)
第1図は、後手から香車で王手をかけられた局面です。
一見、受けが利かないように見えますが、先手勝ちの局面です。
まず、2八に合駒をするのは△同銀成で意味がありません。
また、▲1八玉と逃げるのも、△2七銀▲1七玉△2六銀で詰んでしまいます。
あきらめてしまうところで飛び出すのが、中合いの歩▲2七歩(第2図)です。
第2図(▲2七歩まで)
後手が△同香不成と取ってくれば、▲1八玉(第3図)とかわします。
第3図(▲1八玉まで)
中合いの歩の効果で、2七に駒を打つスペースがなくなっているんですね。
仕方なく後手は△2八香成と迫りますが、▲1七玉(第4図)とかわしておいて先手玉は詰みません。
第4図(▲1七玉まで)
一方後手玉はほぼ受けなしの状態なので、先手の勝ちとなります。
また、第2図で△同香成とすれば先手玉は必至ですが、王手ではないので▲7一角(第5図)と打って先手の勝ちです。
第5図(▲7一角まで)
以下△9二玉▲9三金△同桂▲8二金で即詰みとなります。
その他の手
一応その他の駒を中合いしたらどうなるかも確認しておきましょう。
再掲第1図(△2三香まで)
第1図で▲2七桂(角も同様)とするのは、△2八銀▲1八玉△2六桂(第6図)で詰み。
第6図(△2六桂まで)
第1図で▲2七金とするのは、△同香不成▲1八玉△2九銀▲1七玉△2六金(第7図)で詰みとなります。
第7図(△2六金まで)
よって、歩を中合いするのが唯一の正解ということですね。
通常はわざわざ価値の高い駒を中合いすることは考えないですが、局面によっては歩以外の駒を中合いするのが正解ということもありえます。
ですので、歩に限らず中合いすることで助かるケースがあるということを覚えておくといいと思います。
まとめ
中合いは、駒を近づけることで逃げ道のルートを増やす高度な手筋なので、ぜひともマスターしておきたいですね。
通常は歩を合駒に使いますが、二歩で歩を打てないケース、歩以外の駒が正解のケースもあるので、あきらめずに正解手を探していきましょう。
中合いの歩を自在に使えるようになると、さらなる棋力アップにつながると思います。