今回の記事では、将棋を覚えて間もない方向けに、『両取り』とはなんぞや? を、実際の例もまじえてお伝えしていきたいと思います。
両取りが実現すると駒得となり、わかりやすく局面を優位に進めることができます。
実際の将棋でも両取りを実現できるよう、まずは形を覚えていきましょう。
両取りの意味とその利点
両取りとは?
1つの駒で、2つの駒を取れる状態になっていること。
といっても、将棋はお互いに1手ずつ交代で指すので、両方を一気に取れるわけではないです。
でも、どちらかは必ず取れることになります。
相手の駒を取るということは、
自分の戦力を増やすと同時に相手の戦力を減らす
一石二鳥の手なので、両取りが実現すると局面を有利に持っていきやすくなります。
両取りは、無条件で相手の駒を取れる場合と、自分の弱い駒と相手の強い駒を交換する場合、両方のケースがあります。
タダでボロッと取れてしまうのが一番いいですが、自分の弱い駒と相手の強い駒を交換するのも大きな戦果となります。
ちなみに駒の価値(強弱のランク)は、およそ
飛≧角>金≧銀>桂≧香>歩
となります。
歩の価値が一番低く、飛車と角が一番高くなります。
この辺りは、以下の記事内にある駒の損得も参考にしてみてください。
将棋の形勢判断のやり方 4つの要素を押さえて勝ちにつなげよう
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両取りの具体的な例
それでは、両取りとは実際どのようなものなのか、具体的な実戦例を見ていきましょう。
飛車による両取り
第1図(△2二同玉まで)
第1図の局面で、飛車を使った有効打はどんな手になるでしょうか?
解答
正解は▲6一飛(第2図)です。
第2図(▲6一飛まで)
後手の6四の銀と4一の金、両方を狙っていますが、後手はこの両取りを受ける手段がありません。
仮に△6三歩と銀を守れば▲4一飛成で金を取られてしまいますし、△5一金引と金の方を守れば、▲6四飛成と銀を取られてしまいます。
縦にも横にも利く、飛車の力が最大限に発揮された手といえますね。
角による両取り
第3図(△2二同銀まで)
第3図の局面はどうでしょうか。
今度は角をどこに打てばいいかを考えてみましょう。
解答
正解は▲5五角(第4図)です。
第4図(▲5五角まで)
8二の飛車取りと、2二の銀取りになっています。
飛車取りを受けて△7三銀と引けば、▲2二角成と銀を取って大成功です。
かといって、△3三銀と上がって銀取りを受ければ、▲8二角成で飛車をタダで取ることができます。
角は斜めの方向に遠くまで利きがあるので、思いがけない形で両取りが決まることがあります。
桂馬による両取り
第5図(△6二銀まで)
第5図は、後手がミレニアムと呼ばれる囲いですが、弱点を露呈しています。
解答
正解は▲3四桂(第6図)です。
第6図(▲3四桂まで)
2二の銀と4二の金、両取りがかかりました。
どちらか一方の守り駒を桂馬と交換することができます。
相手の守りが弱体化し、さらに駒得することができるので、先手の成功といえますね。
銀による両取り1
第7図(△7四歩まで)
第7図は四間飛車VS右四間飛車の一戦ですが、ここでも両取りを狙う一手を考えてみてください。
解答
正解は▲5一銀(第8図)です。
第8図(▲5一銀まで)
飛車と金の両取りがかかりました。
これは『割り打ちの銀』と呼ばれる形です。
後手は飛車を取られるわけにはいかないので、△5二飛と逃げ、以下▲4二銀成△同飛と進む展開が予想されます。
結果として金と銀の交換なので、大きな戦果が上がったわけではないのですが、相手の守りの金を剥がすことができたので、先手が少しプラスとなります。
銀による両取り2
最後にちょっとだけ難易度の上がった問題です。
第9図(△1一玉まで)
この問題も銀の両取りを狙いますが、この局面からすぐに実現することはできません。
銀の両取りを行うには下準備が必要です。
解答
それでは正解手順です。
まず▲6三歩成(第10図)と成り捨てます。
第10図(▲6三歩成まで)
と金を放置するわけにもいかないので、後手は△同金と取ります。
そこで▲7二銀(第11図)が狙いの一手です。
第11図(▲7二銀まで)
見事に飛車金両取りがかかりました。
飛車を取られるわけにいかないので△5一飛と逃げますが、▲6三銀不成とタダで金を取ることに成功しました。
なお、角を持っている場合は、銀ではなく▲7二角と打つ方が良いです。
まとめ
ということで、飛角銀桂の両取りの一例を紹介しました。
第4図や第11図のような、きれいに両取りが決まるケースはそうそうないですが、常に狙っていくことが大事です。
案外相手が気がつかなかったり、うっかりしてしまうことがあります。
逆にいうと、自分自身が両取りを喰らわないよう気をつけることも大切になりますね。