※こちらの記事は、2020年3月に書いたものです。
2017年12月、通算7期目の竜王を獲得し永世七冠を達成した羽生善治九段ですが、翌年2018年7月に棋聖を豊島八段(当時)に奪われ、さらに12月には竜王を広瀬八段に奪われ、無冠に転落します。
当時は違和感のあった九段という肩書きも、今ではそこまででもなくなってしまった感があります・・・
永世七冠の他に、羽生九段が達成できるかどうか注目されているもう一つの偉業が、タイトル100期ではないでしょうか。
現在タイトル獲得数は通算99期。
あと1つタイトルを獲得すれば、大台の100期を達成することができます。
果たして、羽生九段はタイトル100期にたどり着くことができるのか、その可能性を探ってみました。
タイトル100期への障害
2つの影響についてまとめてみました。
年齢の影響
羽生九段は1989年に自身初タイトル竜王を獲得、翌年失冠して無冠になりますが、4ヶ月後の棋王戦で棋王を獲得して以降は、前述の竜王を失冠するまで27年9ヶ月、何らかのタイトルを保持していました。
ただ、40代くらいになってからは、羽生九段独特の切れ味が徐々に失われつつあったように思います。
プロ棋士はスポーツと違い、高齢になっても続けられる息の長い職業ではありますが、それでも年齢の影響は避けようがないもの。
羽生九段は2020年9月27日に50歳を迎えます。
無冠になってしまった原因の一つに年齢の影響というのは、間違いなくあるでしょう。
加齢と共に、体力、気力、健康、頭の働きなどが、若い頃のようにはいかなくなるのは誰しもが感じるところですよね。
これはどんな人であっても避けようがないので、いかにして年齢の問題とうまく向き合い、付き合っていくかが大事になってくるのかもしれません。
将棋界の大巨人、大山十五世名人も49歳の時に無冠になっていますが、50代になってから合計11期のタイトルを獲得しています。
大山十五世名人は本当にすごい記録を残している伝説の人なわけですが、十五世名人を見ていると、年齢を言い訳にしちゃいけないのかなと思ったりもします。
ソフトの台頭
将棋ソフトの台頭は、将棋界全体のありようも変えてしまうほどに大きな影響を与えているわけですが、それは羽生九段も同様なのだと思います。
今では、多くのプロ棋士がソフトを活用していますし、ソフトを活用しなければ取り残されると感じている棋士は多いでしょう。
ソフトの事前研究が大きなウエイトを占めてきている感じはしますし、そういった研究を知らないでいると、簡単に負けてしまう時代になっています。
また、プロ棋士以上といっていい強さと、人間にはない独特の無機質な指し手に、感覚を破壊されてしまうといったこともあるのかもしれません。
羽生九段の場合、これまで『羽生善治』という独自の強さを築いてきたわけですが、現在のソフト時代にまだ対応できていないのかなという印象も受けます。
渡辺三冠が羽生九段に竜王を奪われた年度は、初の年間成績負け越し、順位戦A級から陥落するなど、絶不調に陥っていました。
しかし、その後の復活劇は周知の通りですよね。
渡辺三冠の場合は年齢による衰えは考えにくく、適応できていなかったソフト時代に対応できるよう、アップデートが完了したと考えていいのではないかなと思います。
羽生九段の場合は、まだこのアップデートができていないのではないかと推測します。
羽生九段は、これまで築いてきた『羽生善治』ブランドがあまりに強く、今までの感覚を修正し、再構築するのが他の棋士に比べて難しいのではないか、と思ったりもします。
50代でタイトルホルダーとなった将棋のプロ棋士
50代でタイトルホルダーとなった棋士は、先ほど紹介した大山十五世名人を含めてわずか3人しかいません。
棋士 | タイトル | タイトル奪取or防衛した時の年齢 |
大山康晴十五世名人 | 王将 | 59歳0ヶ月(1年後失冠) |
二上達也九段 | 棋聖 | 50歳0ヶ月(半年後失冠) |
米長邦雄永世棋聖 | 名人 | 49歳11ヶ月(1年後失冠) |
※大山十五世名人は、王将他、棋聖、十段含め、50代でのタイトル獲得は11期。
これを見ると、ベテランといわれる年齢になってもタイトルを保持することが、いかに難しいかがわかります。
まとめ
個人的に、現状のままでは、タイトル100期は厳しいのかなと感じています。
でも、50代突入と同時に、新しい羽生九段を見ることができたらあるいは・・・という期待も少しだけ抱いています。
羽生九段のタイトル100期は至難の業ですが、いずれにしても、日々挑戦するその姿を一喜一憂しながら楽しめるのは、幸せなことなのかもしれませんね。