居飛車穴熊対策として考案された戦術の一つに、トマホーク戦法があります。
玉頭銀+端桂で一気に攻め潰そうとする、破壊力バツグンの豪快な戦法です。
山本博志四段が奨励会三段時代に、藤井聡太三段(当時)にトマホーク戦法で勝利を収めたこともあるほど、優秀な戦法なんですね。
プロの公式戦で採用されたこともあります。
今回の記事では、トマホーク戦法の流れについて詳細に解説していきたいと思います。
トマホークの由来は諸説あり
トマホークという名前がついた由来については諸説ありますが、
- 桂が跳ねる様子が、振り下ろす斧を連想させる
- 将棋倶楽部24でtomahawk(アカウント名)が頻繁に採用していた
といった説があります。
また、タップダイスさんがこの戦法の第一人者として有名です。
トマホーク戦法は5筋不突穴熊に有効
トマホーク戦法は、居飛車穴熊なら形を問わず採用できるのかというとそうではなく、5筋の歩を突かない穴熊に有効な戦法です。
5筋の歩を突く形の穴熊に関しては、別の戦法で挑む必要があります。
5筋の歩を突く穴熊に関しては、かなけんシステムも有力です。
三間飛車VS居飛車穴熊対策には、かなけんシステムがおすすめ!
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トマホーク戦法の流れ 4八玉→玉頭銀→端桂
初手から、▲7六歩△8四歩▲7八飛△8五歩▲7七角△3四歩▲6六歩△6二銀▲6八銀△4二玉▲6七銀△3二玉▲4八玉△3三角▲3八銀△2二玉▲1六歩△1二香(第1図)と進み、後手は居飛車穴熊を明示します。
第1図(△1二香まで)
先手はノーマル三間飛車に組み、4八玉型で戦うのが大事なポイントです(理由は後述)。
先手は▲5六銀と出て玉頭銀を狙います。
後手は△4四歩とは受けず△1二玉と穴熊に潜り▲4五銀に△8四飛(第2図)と浮きます。
第2図(△8四飛まで)
飛車の横利きで▲3四銀を受けるのが後手の狙いです。
以下、▲1五歩△2二銀▲1七桂(第3図)と進めます。
第3図(▲1七桂まで)
先手は端に桂を跳ねて、守りの桂を攻めに参加させます。
ここで、△1五角としてきたら、▲2五桂△2四角(第4図)と進めてOKです。
第4図(△2四角まで)
1歩取られますが、先手は角道を通した後、いつでも▲1三桂成から殺到する狙いがあるので全く問題ありません。
むしろ後手の駒組みが遅れるので、先手としては歓迎かもしれませんね。
第3図に戻り、後手も△3一金と駒組みを進めます。
先手は、▲2五桂(第5図)とさらに桂を跳ねます。
第5図(▲2五桂まで)
ここで後手が『桂の高飛び歩のえじき』を狙って、△5一角と引くのは先手の望むところ。
▲6五歩△2四歩▲1三桂成(第6図)と攻め込んで先手優勢です。
第6図(▲1三桂成まで)
以下△同香▲1四歩△同香▲同香△1三歩▲同香成△同桂▲1四歩(第7図)が進行の一例。
第7図(▲1四歩まで)
先手の角のラインが強烈すぎて、後手が受けきるのは容易ではありません。
第5図に戻り、▲2五桂には後手も△2四角(第8図)とかわすのが最善です。
第8図(△2四角まで)
少し前に、先手の玉の位置は4八がおすすめとお伝えしました。
なぜかというと、△2四角とした時に、5七の地点を玉が守っているからなんですね(△5七角成を受けなくていい)。
角がそれたのを見て、先手も▲6五歩と角道を開けます。
後手も△5一金と陣形を整えます。
ここから先手は▲6八飛と四間飛車に構えるのも有力ですが、今回は▲6六角(第9図)と上がる手を見てみます。
第9図(▲6六角まで)
△8二飛と下がるのは▲3四銀があるので、△7四飛が普通です。
先手も、飛車交換後の△6七飛(角金両取り)を避けて▲5八金と上がっておきます。
後手も△4一金と守りを固めます。
後手陣に離れ駒ができたのを見て、先手は▲7五歩と突きます。
後手は△9四飛と遠くに逃げますが、構わず▲7四歩(第10図)で決戦に持ち込みます。
第10図(▲7四歩まで)
△9四飛のところ△8四飛でも、▲7四歩でOKです。
ここから後手の応手は、
- △7四同歩
- △7四同飛
- △3二金右
の3通りが考えられます。
△7四同歩
△7四同歩には、▲3四銀△3二金右▲1四歩△同歩▲1三歩△同香▲同桂成△同桂▲9六香(第11図)が進行の一例です。
第11図(▲9六香まで)
△9五桂の合駒は▲同香△同飛▲8四角の飛車銀両取りがあります。
△7四同飛
第10図から△7四同飛には、▲同飛△同歩▲1四歩△同歩▲3四銀△3三歩▲1三歩△同香▲同桂成△同桂▲2六香(第12図)が進行の一例です。
第12図(▲2六香まで)
端攻め+2三の地点が弱いのでそこを狙って攻撃を続けます。
飛車の打ち込みも残っているので、先手の攻めが途切れることはなさそうです。
△3二金上
第10図で△3二金上として、2三の地点を補強する手も考えられます。
これには▲3四銀△4四歩▲同角△7四歩▲1四歩△同歩▲1三歩△同香▲同桂成△同桂▲1四香(第13図)が考えられる展開です。
第13図(▲1四香まで)
後手も『大駒は近づけて受けよ』の△4四歩を入れて、第11図の筋を消しつつ抵抗しますが、第13図の展開も先手優勢の局面です。
第13図からは、
- △1二歩なら▲1三香成△同歩▲2六香
- △7五歩なら▲2二角成△同金上▲4三銀打
として攻めが続きます。
まとめ
トマホーク戦法は、角のラインを活かしての端攻めが強力で、その他にも飛車や角をいじめる手段もあり、さまざまな攻め方があるのが魅力です。
とはいえ、後手に盤石の体勢で待ち構えられると、本譜のように簡単にはいかないことも多いです。
それでも、今回の攻め筋は参考になると思います。